はじめに:
家族でフィンランドで長期間暮らすことになり、在留許可申請を行いました。これがとても大変でしたので、備忘録的にまとめます。2024年現在のものですし、また、一人一人条件が異なりますので、この通りにやってうまく行くことは保証しません。ご注意ください。日本企業から出張を命じられた場合、フィンランド企業で働くことになった場合、フィンランドの大学で勉強する場合、大学のサバティカル制度で在外研究する場合など、いろいろな事情があると思われます。
EnterFinland: https://enterfinland.fi/eServices/
要する時間:
単独の場合は1〜2ヶ月、家族滞在の場合は2〜3ヶ月程度を見ておいた方が良いと思います。また、見てもわからないかもしれませんが、https://migri.fi を一度ざーっと見ておいた方が良いです。
Step 1. 事前準備:
- 家族全員のパスポート(有効期限が一定期間以上のもの): 0歳や1歳のように意思疎通が取れない子どもであっても必要です!写真館などで写真を撮ってもらいましょう。
- 家族全員のパスポートのコピー: コピーも必要でした。
- 銀行の預金残高証明: フィンランドの移民局のWebページなどに、1年間の目安金額等が載っています。それ以上の金額となるものを用意しておいた方が安全だと思います。三井住友銀行の場合、申請から2〜3週間程度かかりました。
- フィンランドに行く理由がわかる証明書: 企業であれば企業の入社証明、大学であれば入学証明など、フィンランドに行かなければならないことがわかる証明書を用意します。https://migri.fi にある、Hosting agreement (webからpdfで入手できます)があると安心です。
- 海外の保険の加入者証明: クレジットカードの付帯しているものなど、病気や怪我をしたときに補償が得られる保険の加入証明を用意します。発行に時間がかかる場合があるので、注意してください(三井住友銀行のクレカの場合、webで即座にpdf発行されました)。なお、結論からいうと、これはなくてもよさそうでした。(ギリギリになってこれが必要ということを知り、クレカが即座に発行してくれる3ヶ月の保険の加入証明を急遽用意しました。私の場合、1年間の渡航でしたので、面接で「これじゃ短すぎる」と言われたものの、「後で長期のものを用意する予定です」と答えたら、okとなりました。したがって、そこまで強い要求ではないのかな?と感じました。
- 博士号取得証明書: 研究のために渡航する場合は、博士号の取得証明書が必要になります。出身大学から英語で発行してもらいましょう。郵送対応の場合、だいたい1〜2週間程度かかります。
- 収入証明書: フィンランドで生活する上で、収入が継続的に得られるのかを明らかにする証明を取得します。私の場合、過去1年間のものと、渡航後1年間のもの、会社に依頼して2つ用意しました。残高証明もそうですが、きちんと生活できることを証明できることが必要なのだろうと感じます。
- 外務省のアポスティーユ付きの戸籍謄本(全部事項証明書): 詳細は事項
- フィランド公認翻訳者により翻訳された戸籍謄本: 詳細は事項
- 申請者全員の写真(パスポートサイズ): これは電子版不要。面接のときに写真そのものを持っていく!
戸籍謄本:
- まず、本籍地の市役所に対面ないしは郵送対応で、戸籍謄本(全部事項証明書)を入手します。郵送の場合、この処理で1週間程度かかります。
- その後、日本語の戸籍謄本を日本の外務省に郵送で送り、アポスティーユを付与してもらいます。市役所発行のものは日本の公的なものと見做されないようで、この対応が必要になります。この処理で2週間程度かかります。
- 日本語の書類を送ってもフィンランド側は読めないので、アポスティーユのついた日本語の戸籍謄本をスキャンなどでpdf化し、フィンランド公認翻訳者にメールで送り、英語かフィンランド語に翻訳してもらいます。私は、ペトリさんにお願いしました(https://www.japantofinland.com/)。翻訳料金は2万円未満でした。頼むときは、名前のアルファベット表記(パスポートと対応づいていること)を知らせる必要があります。なお、フィンランド公認翻訳者ではない場合、はじかれるというお話を聞いたことがあるので、注意してください。翻訳後、フィンランドから自宅に郵送してもらいます。依頼から自宅に届くまで、3週間程度かかりました。
上記の補足:
- 家族の在留許可を申請する場合、この処理があるので、とても時間がかかります。私の場合、合計で1.5〜2ヶ月くらいかかりました。単身の場合はこの処理がありませんので、比較的早く済みます。
- 戸籍謄本関係をうまくできず、後述の手続きを失敗してしまう方がとても多いそうです。急いでいる方は致命的になる場合があるので、いろいろなwebページを参考に、丁寧にやった方が無難です。
- 不正確な情報ですが、どこかのwebページに、公認翻訳者以外の翻訳でも良いと記載されていました。ただしその場合、翻訳済みの戸籍謄本を、日本にある公証役場でアポスティーユをつけてもらう必要があるとのことでした。つまり、日本語の戸籍謄本、翻訳語の戸籍謄本、2つともアポスティーユがつきます。ただしこれは正確な情報かはわかりません。自己責任でお願いします。
Step 2. エンターフィンランドの入力
続いて、エンターフィンランド経由(https://enterfinland.fi/eServices)で、在留許可の電子申請を行います。私の場合、本人と妻のアカウント2つを用意しました。子どもの在留許可は私に紐づける形になるので、アカウントは不要です。
なお、私の場合、手際が悪いことが原因かもしれませんが、この入力に5時間以上かかりました。ぜひ、体力と時間があるときに行うことをお勧めします。
まず、フィンランドに渡航する主たる理由がある人の登録を行います。ここで、Step 1で用意した書類のpdfをすべてアップロードし、入力を進めます(戸籍謄本は、日本語のものも、翻訳語のものも、両方アップします!)。いまいち意味のわからない自由記述欄も結構あり、そこには英語でなるべく丁寧に説明していきました。なお、Dビザを得るかどうかを記載する必要があります。これは下に記載します。
入力を終えると、Family identification code が発行されます。これを用いて、登録を終えたフィンランドに渡航する主たる理由がある人のアカウントで、子どもの登録を行います。
続いて、(子ども以外の)家族として滞在する人物の登録を行います(私の場合は、妻)。ここでは、新規にアカウントを作成します。このとき、家族のための在留許可をエンターフィンランドで選択していき、Family identification code を入力することで、家族全員のアカウントが紐づけられます。これを入力しないと独立の申請になってしまうので、注意が必要かもしれません。
また、ここで申請がうまくいくと、記入内容と領収書をpdfでダウンロードできるようになります。これはをダウンロードし、印刷して、面接で持参することとお勧めします。料金を支払ったのかなどを聞かれますので、見せるとスムーズに進みます。
Dビザ, D査証について:
在留許可申請を行っているとき、Dビザ(D査証)を同時申請するかを問われる項目があります。Dビザと在留許可は別物で、以下の違いがあります。
- Dビザ: 100日間固定の在留を許可するもの。パスポートに貼られるステッカー
- 在留許可: 指定した日数(例えば1年間とか)の在留を許可するもの。カード
これをみるとDビザは不要に思えます。ただ、Dビザを申請しておくと、在留許可のみの場合と比較し、2週間程度早くフィンランドに入国できるようになります。私の場合、面接からわずか1週間程度でDビザ付きのパスポートが返却され、フィンランドに入国できるようになりました。Dビザを申請しなかった場合は、とても時間がかかるようです。この理由は、フィンランド国内で在留許可証(カード)が発行され、それが日本フィンランド大使館に届き、そこから自宅に郵送される、というプロセスを踏むからだと想像しています。ステッカーの場合はフィンランド国内から大使館の間のプロセスが省略されるのかもしれません。詳細は不明です。
また、Dビザ申請者は、在留許可をフィンランド国内で受け取れるので、日本で待つ必要がなくなります。
Step 3. 面接の予約
家族全員の申請を終えて、待っていても何も起きません!日本にあるフィンランド大使館に、登録を終えたので面接をお願いしたい、というメールを送ります。この際、自分が空いている日時を送るとスムーズです。私の場合、「家族がいる場合は時間がかかるので、平日の午前9時から」となりました。なので、家族がいる方は、平日の午前9時からをokにしておくと良いかもしれません。
私の場合は、2日後に返信があり、無事に面接日が予約できました。
Step 4. 面接!(東京の広尾駅にあるフィンランド大使館)
フィンランド大使館は東京の広尾駅から徒歩15分程度のところにあります。また、入室後に色々と記入する書類などがありますので、15分前には到着しておいた方が良いと思います。
このとき、Step 1の書類すべてを紙で持参します。写真や日本語の戸籍謄本も必要なので、注意してください。
面接は英語で行われますが、高い英語能力は不要です。フィンランドで何をするのか、どこに住むのか、などを聞かれるくらいです。その後は、持参した書類をすべて渡したり、両手5本指の指紋の採取などを行います。妻も同様ですが、子どもは特に何もありませんでした。
私の場合、Dビザを申請していたので、大使館にパスポートを預けて、帰宅しました。そして面接4時間後くらいに決定通知のメールが来て、無事、在留許可の申請がうまくいったことがわかりました。他のブログでは数週間かかった方もいるようでしたので、とても早い印象を受けました。なお、書類不備がある場合は、メールで再提出依頼が来るので、こまめに確認しておくことが必要です。無視すると手続きが止まってしまいます。
その後1週間程度で、Dビザが貼られたパスポートが郵送で自宅に返却されました。この時点で、フィンランドに入国できるようになりました。
Step 5. 在留許可の取得
その後、さらに2週間ほど経過してから、フィンランドのR-Kioski(国内に点在するコンビニ)に荷物があるので取りに来てください、というメールがありました。中身は記載されていませんでしたが、在留許可であろうことは想像できました。しかし、受け取り期限がフィンランド渡航前でしたので、受け取ることができませんでした。R-Kioskiや輸送会社などに、渡航タイミングまで待ってほしいというメールを送ったものの、前向きな返事はなく、フィンランド移民局に返送されてしまいました。フィンランド大使館にも聞いてみましたが、管轄が違うということでどうにもなりませんでした(フィンランド大使館は日本の施設、フィンランド移民局はフィンランドの施設で、管轄や権限が違うようです)。
そのため、フィンランド移民局にメールをし、どのようにすれば受取できるかを聞いてみたところ、残念ながら返信がありませんでした。どうしたものかと考えていたところ、フィンランドの所属先から荷物が来たので来て欲しいという連絡があり、フィンランド渡航後にそれを受け取ったところ、在留許可を手にすることができました。所属先の住所については、電子申請を行った際に入力したものを参照したのだと思います。
私が気づいていないだけなのかもしれませんが、申請者に知らせずに割といろいろなところに在留許可を郵送するような印象を持ちました。ちょっと危ういような気もしましたが、無事、在留許可を取得できました。
なお、Dビザの申請を行わなかった場合、在留許可のカードは自宅に届きます。渡航まで余裕がある方は、Dビザを申請しない方が無難かもしれません。
トータル料金:
- 切手代: 1000円いかないくらい
- 翻訳: 80ユーロ
- 自分の在留許可: 475ユーロ(Dビザ付き)
- 妻の在留許可: 565ユーロ(Dビザ付き)
- 子どもの在留許可: 335ユーロ(Dビザ付き)
- 注: Dビザをなくすとちょっとだけ安くなります。
合計で、2024年序盤のレートで、25万円弱です。円が安いのでやむを得ないですが、なかなか高い出費でした。